イベント名

「ミッション;神戸」第2回・ウチダケイスケさん(ミドリカフェ)レポート

 

 

【ゲスト】 ウチダケイスケさん(ミドリカフェ)

 

ウチダケイスケさん(ミドリカフェ)

19兵庫県立大学院淡路景観風芸学校インストラクター。都市部におけるエコでスロ ーなライフスタイルを提案する「ミドリカフェ」を、岡本で運営。オーガニック な飲食メニューのほか、無添加・無農薬で育てるガーデニング雑貨やタネ苗の 販売、菜園や庭づくりの設計デザインをおこなう。現在、森とまちをつなぐ「旅 する大地」を展開中。夢は、地球の緑化。

 

 

 

 

ハーブや観葉植物、育ててみたこと、ありますか?
失敗したこと、ありませんか?


「植物を育てる才能がないんだわ」 私はそう、思っていました。
でも、「それは土のせいです」と、ウチダさんは断言します。

 

 

ウチダさんは、神戸・岡本の人気オーガニックカフェ「ミドリカフェ」オーナ ーにして、造園デザイナー。
花や野菜など「うわもの」を手がけるうち、海外から輸入され工場でつくられた腐葉土や、雑草が生えない土に、違和感を抱くようになりました。


家やまちなど、私たちの身近にある土を、もう一度、「生きた」土、豊かな緑を育む土にしたい。
暮らしに「緑」を取り戻したい。この夏スタートした、森とまちをつなぐプロジェクト「旅する大地」が、いま熱い注目を集めています。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

「野菜を残すひと、お断り」まで

 

 

 

湯川: オーナーをされているミドリカフェは、商店街からも駅からも離れた、へんぴな場所にありますよね。でも以前は、駅のすぐ南で、いわゆる ”岡本カフェ ”の草分けとして人気を集めた店だったと聞いたことがあります。

 

  

ウチダ: 造園デザイナーをしながらお洒落なカフェをしたいとオープンしました。いわゆるカフェメニューを並べて。

それが流行り過ぎちゃって、スタッフをたくさん雇って、自分は裏方にまわって、実際にどんなお客さんが来ているかわからない......という状況になってしまって。

 

また、カフェを通じて、有機野菜を専門に扱っているひとと知り合ったことで、農家さんとの交流がはじまると、農業がいかに大変かがわかってくるじゃないですか。

でも、お客さんのなかには、野菜に見向きもせず、そのまま残すひともいるんですよね。農家さんの野菜を預かって提供する立場として、やはり、考えざるをえなくなりました。

  

  

  

 

 

  

 

 

そんなこんなで疲れちゃって。奥さんと、新婚旅行を兼ねて石垣島に行ったんです。そこで、のんびりした生き方や働き方に触れて、「ああ、なんだ、これでいいんだ」と。


それでいまは、「野菜を残すひとお断り」と書いたオーガニック風カフェ(笑)をやっています。スタッフはいなくて、奥さんとふたり。メニューは、旬の野菜の入荷次第で変わります。

 

 

 

 

サプリメントか、食べ物か

 

 

 

湯川: そのお店で、現在は土も販売されていますね。「とはいえ」十分にデザイナーさんらしいお洒落なカフェで、そこまでしますか!?(笑)

 

  

ウチダ: 造園やとして、またカフェのオーナーとして、農家さんや自然とかかわるうち、土を変えるのが、地球を綺麗にするいちばん手っ取り早い方法だと思うようになったんですよね。

 

 

湯川: 地球は綺麗じゃない?

 

 

ウチダ: うん。いま、土壌汚染がひどいことになっています。

 

日本で「三大肥料」と言われるのがあるんですよね、窒素、リン酸、カリ。窒素を入れると葉っぱが青々とする。リン酸は花を綺麗にする。で、カリは根っこだったり茎に効く。どでも、とりあえず見栄えをよくするための「肥料」です。

 

日本はとくに、なぜか窒素を入れたがるんです。アホみたいに青々とした色のキャベツなんかあるでしょ。あれ全部窒素ですよ。

 

 

窒素はもともと、大気の8割を占めていますよね。それを土で吸収したものを、微生物が食べている。

 

土に取り込むには、生き物が必要です。多すぎる窒素は土に取り込めないので、川に流れ、海に流れます。諸説いろいろあるのだけど、エチゼンクラゲや赤潮の発生、そして酸性雨の原因のひとつになっているという指摘もあるんです。

 

 

 

 

  

  

 

 

ウチダ: あのね、腐葉土は山でできるんですが、1センチの厚さになるのに、どれくらい時間がかかると思われますか?

 

実は、100年かかるんです。

 

 

一方で工場では、数週間で土をつくります。実際に見学に行ったんですけど、まず、世界中から原料を運んでくる。それらを細かく粉砕し、薬品で分解させ、焼却する。輸送から焼却まで、ものすごい石油エネルギーを使ってます。

 

ちなみに、売っている土に、真っ黒なものがあるでしょう? あれは、焼いて消毒したものですなんですよ。ひどいのは、炭で色をつけているものもあります。だから、洗ったら落ちちゃう。

 

 

湯川: えっ! 黒いのは良い土だと思っていました。

   

 

ウチダ: いや、自然の土だと、どう頑張っても焦げ茶色にしかならないです。

 

こうやって工場でつくられた焼いて殺菌した土に、肥料を混ぜる。だから1年目は良く育ちます。でも、土自体が痩せているので、その先がない。それで、肥料を入れ続ける。

 

たとえるなら、弱っているこどもに「サプリメント」を与え続けるようなものです。

 

 

湯川: だから「植物をうまく育てられない」のは「土」のせいだと、断言されるのですね。

  

 

ウチダ: はい、いまは土がおかしいんです。あなたのせいではない。土さえちゃんとしていれば、植物はなんでも育ちますよ。

 

そういう意味では、ホームセンターで、「観葉植物の土」「野菜の土」「花の土」と分けて売っているのも、意味分からないですね。

 

 

  

 


 
 

 

 

ミミズはすごい

 
 

ウチダ: 僕らが扱っているのは、生きている土で、微生物も「飼って」います。山の自然と同じ、健康な土ね。

 

なので、適度な「食べ物」としての落ち葉や水分を与えつづければ、肥料は一切要りません。生き物の力で、数ヶ月で腐葉土になります。

 

透明のパッケージなので、ちゃんとミミズも見えますよ。

 

 

湯川: えっと、見えるんですか......。

 

 

ウチダ: けっこう気持ち悪がられるんけど(笑)。

 

でも、ミミズはすごいんですよ。土の中を這うと、あの粘着質の液体が付着して、トンネルの壁が崩れにくくなる。そこに、植物の根っこが伸びていくんです。しかもトンネルに落ちているミミズの排泄物が、栄養になる。

 

よく、山に入って「土がフカフカする」と言うでしょう? あれは落ち葉ではなく、そういう細い根っこがいっぱい這っているからなんですね。

 

 

 

 

「旅する大地」へ

 

 

 

ウチダ: そういう生きた森の土を、町にもってくるという取り組みが、ぼくらがこの夏から始めたプロジェクト「旅する大地」です。

 

町を、森につなぐ。町の庭で「森育ち」の土を使う。さらにはその土ができる現場を実際に観に行くというツアーも計画しています。

 

 

「農業」と考えると敷居が高いのですが、「農のある生活」くらいから始めるといいんじゃないかな。土さえあれば、本当に勝手に生えますから。全然難しくないです。

 

古くなった土に、この土を加えて、落ち葉と米ぬかを一緒に入れてください。水だけ切れないようにしてあげれば、生き物がいる限り、土には戻っていく力があります。

    

 

    

  

   

   

  

   

 

 「自然にお邪魔する」

  

 

 

湯川: さて、ウチダさんの「おすすめの神戸」は、どちらですか?

 

  

ウチダ: 山を走るのが、好きですね。森のなかに入ると、デトックスされる気分。

 

芦屋、岡本あたりからの六甲山は、水場あり、岩ありで、おもしろいですよ。たとえば、岡本の天井川沿いに上がって岡本八幡神社から木漏れ日広場まで、ゆっくり歩いて2時間。表記あってわかりやすいです。意外と日暮れが早いので、午前中がおすすめです。

 

 

 

 

 
 

 
 

 

 

ウチダ: 僕らはここを走るんです。トレイルランニングは、与えられた条件のなかでこなすしかないので、「自然にお邪魔する」という感覚が好きですね。

 

たとえば、僕らはつい「花を咲かせる」なんて言うけれど、花って、勝手に咲くものでしょう? 人間には、花を咲かせることはできない。そういう視点でいうと、自然に「お邪魔する」とか「寄り添う」というかんじが、しっくりきます。

 

 

あ、ひとつ、山で注意していただきたいのは、そこに生えているものを持ち帰らないこと。多様性が大切ですから。

 

 

湯川: 「多様性が大切」と、よく耳にしますが、そんなに大切なのですか?

  

 

ウチダ: はい。たとえば、キャベツ畑は一面キャベツだから、キャベツを好きな虫しか来ない、だから薬を撒く、ということになるんです。

 

でも、いろんな植物があると、それぞれが好きな微生物、小動物、鳥、捕食し合いながらバランスをとって、誰がルールを決めているわけでもないひとつの世界をつくっています。それを人間が崩してはいけないです。

 

 

 

湯川: なるほど、ちょっとわかった気がしました。それでは最後に、もうひとつ、おすすめスポットを教えていただけませんか?

 

 

ウチダ: もうひとつですか? うーん、そうですね。じゃ、ぜひミドリカフェに来てください(笑)

 

 

湯川: まさかの(笑) でも、ミドリカフェのたまごごはん、本当においしいんですよ。その卵が、たまたま、EINSHOPの岡本さんがされている薪割りグループメンバーの農家さんだったりするんですよね。無農薬・合鴨農法の。つながっていますね~。

 

多様性が必要ということ、人間は花を咲かせられないということ。今日は本当に素敵なお話を、ありがとうございました!

 

 

 

ミドリカフェ
神戸市東灘区本山北町2-6-24(水曜・木曜定休)

http://midoricafe.jp

  
  

  

 

   

 

 

 

<蛇足カナ?>

  

出会いは、「Sparks! 」という、神戸の学びのプレゼンイベントでした。

 

いま土がおかしい、でも土をよくすることで植物は勝手に育ってくれる、それは私たちにもできることだ……。
淡々と話すウチダさんのプレゼンは、大きな感動と拍手を呼びました。

<当日の動画>
https://www.youtube.com/watch?v=JsLUamOwEtk

 

 

「土が生き返れば、植物はちゃんと育つ」
ごく当たり前の、でも効率化を求める社会が見失ってしまったことを、しっかり見つめる。

 

自分ができることから着実に、しかし遠く「緑の革命」まで見据えて動くひとです。
この日も話に出たのですが、革命の日に庭掃除をしていたというガンジーのエピソードが大好きなあたり、人柄がにじみでていますね。

 

 

じつは私がいまいちばんしたいのは、「農」なんです。
生産手段をもつというのが、このマネー資本主義のもとで、いちばん勇気をもてる気がする。

 

でも「農業」はしきいが高すぎるし……と思っていたところ、ウチダさんが「農」でいいんじゃないか、と言ってくれました。

 

それで、プランターや庭の一角から地球緑化をはじめる、「リベルタ学舎ミドリ部」をスタートさせました。
もちろん顧問は、イケメン庭師・ウチダケイスケ先生。

集まった素人の主婦に、土の基本から、なんとゾーニングなど景観設計の基本まで、ていねいに教えてくださっています。

 
このひと、本気です。

 

 

花は咲く。野菜は育つ。人間が「咲かせたり/育てたり」するわけではない。
サラリと、そんな言葉が出てきます。
自然と触れ合っていると、ひとは謙虚になるのでしょうか。
 

そして、ひとだって、自然。
自分に都合の良いように育てようなんて、無理なんですよね。
そういうことも、今回の対談では話に出てきて、一同が大きく頷いたところでした。

 

 

これだけ魅力があってイケメンなのですから、男女問わずファンが多いのも頷けます。
やらなきゃいけないことはひとりでもするけど、気づくと多くの仲間に囲まれています。

あ、ちなみに、今回の写真は、ふだんの実力の3割くらいしか出ていません。
なんと、直前に39度近い高熱が出たところを、5年ぶりという売薬&ビタミン剤で乗り切ってくださいました。

 

 

ウチダさん、ありがとうございました。
緑の革命、一緒にやります!

 

  

 

(文・対談再構成/ 湯川カナ)

  

 

 

 

<当日のアルバム>

 
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